

実家が経営していたブティックを継ぐために、長年アパレル業界で働いていた土田。しかし、あることをきっかけにアパレル業界から飲食業界に転身する。
将来実家を継ぐための勉強をかねて、ずっとアパレル業界で働いてきました。だけど39歳になった年に、業績が良くないからという理由で実家のブティックが閉店することになったんです。これがきっかけで、自分が40歳になったとき、何をしていたいかを考えるようになりました。そこで、もともとやりたいと思っていた飲食業界への転職というのが頭に浮かぶようになったんです。年齢的にもギリギリかなと思ったし、2人の娘たちも将来は洋服屋で働きたいと言っていたので、正直悩みましたね。だけど、やりたいことをやってみたら? という家族からのあと押しで、40歳からの再チャレンジを決心しました。
アパレルで働く父親に毎日のようにコーディネートを相談する娘たち。最初は転職に反対であったが、最終的には土田の想いを受け入れる。彼は大庄に入社することになった。同じサービス業とは言え、アパレルとはまったく違う接客の考え方に驚きを感じることとなった
実は最初、売るものが洋服から食べ物に変わるだけで、接客は同じだと思っていたんです。ただ料理を売ればイイと思って。でも入社してすぐにその考えが甘いということが分かりました。洋服屋の場合、お客さまは自分の欲しい洋服を買うために複数のお店を回って買い物ができます。だから、来てくれたお客さまが10人いたら、そのうち1人に買ってもらえれば良かった。だけど、飲食店は来てくれたすべてのお客さまに満足してもらわないといけない。ただ料理を売れば良いわけじゃないんですよね。それに気づいてからは、来てくれたお客さま全員に、また来たいと思ってもらえるような努力をするようになりました。
長年培ってきたコミュニケーション力とアパレルの知識を武器に独自の接客方法を編み出した土田。彼の物腰のやわらかさと端的で的確な回答は、聞くものの心をも惹きつける。
お客さまと会話する時は、アパレル時代に学んだ、身構えられないように会話をするテクニックを活かして、やわらかい物腰で話しをするようにしています。京成津田沼駅は終点の駅だから、電車に乗り遅れた人や寝過ごしてしまった人が夜中にひとりでいらっしゃることが多いので、お客さまとはよく会話をしますね。
ほかにはないサービスの提供と、ここじゃなきゃ食べられないような名物を作りたい。とにかく新しいことに挑戦したいですね。それができたら90%。いつも新しい目標を持っていたいから、100%にはしません。
3月11日の東北での震災のときも無料開放したお店にひとりで避難してくる方が多かったので、こまめに情報を提供したり、少しでも不安をやわらげられるように声をかけたりしていました。特別なことをしたつもりはなかったけど、この日をきっかけに常連さまになっていただいたり、お礼のお手紙をくださったりしたお客さまがいらっしゃって感動しました。それから、もともと婦人服を扱っていたので女性のお客さまの洋服は気になります。身につけている洋服やアクセサリーについて会話を持ちかけたり、洋服のアドバイスを求められたり、うまく前職を活かすことができていますよ。
土田の印象はお客さまに色濃く残されている。しかし、そんな彼でもコミュニケーションの取り方で苦労したことがあった。
店長になってすぐの頃は調理場とのコミュニケーションに苦労しました。お店をひとつのチームにするためにも、職人である調理人たちにそっぽを向かれない努力しました。と言うのも、店長になったのは入社8カ月の頃だったから、まだ飲食業界をあまり分かっていない状態だったんです。だから、教えてください、助けてくださいというスタンスで、分からないことは頼るようにして、作られた料理に対して感謝をするようにしました。
自分の役職に奢ることなく、分からないことは分かる人に頼り、協力してもらうことで調理人たちの心を掴んだ土田。店長として認められ、いろんな話を聞き出すことができるようになった彼は、次に変える努力を始める。
みんなそれぞれ、こうしたらもっと良くなるのにって思っていることがあるんです。それを聞き出して、「じゃあこうしてみましょう」って提案しながら少しずつお店を変える努力をしています。たとえば、温かい料理を温かい状態で召し上がってもらうために、鉄板やお皿ではなく固形燃料に火を点けて出すようにしたり。お店のオススメメニューを注文してもらうためにメニューをテーブルの上に置いておくんじゃなくて、直接持って行って説明するようにしたり。そういった、小さい積み重ねを繰り返すことで最終的に良い方向に大きく変わっていたらイイなと思っています。
何かをいきなり大きく変化させるのではなく、小さな変化を積み重ねることで、結果的に良い方向に大きく変わっていることを目指している土田。小さな変化はスタッフたちの負荷にならないため、モチベーションが下がることもない。アパレル時代に土田は突然の大きな変化を経験しており、そこで得た苦労を経験として生かしている。そんな彼に、これから成し遂げたいことを聞いた。
いままではお店の近所にライバル店がなかったけど、つい最近新しく別の居酒屋ができたんです。だからこれからは、お客さまに選ばれる努力をしないといけないなと思っています。それから個人的には、お客さまと会話して、スタッフから意見を聞いて、少しずつ変化させていくのが好きなので、生涯“現場主義”で頑張りたいですね。50歳までには独立して、自分のお店を持つことができたら最高です。



















