海洋深層水を継続的に飲んでいる脳梗塞(こうそく)患者の一部に、動脈硬化の原因となる血小板の凝集能が抑制されているケースが見られたことをきっかけに、高知大学医学部 笹栗志朗教授はウサギを使った動物実験を行った。海洋深層水による生物への効果が科学的根拠に基づいて明らかになった初めての研究とされる。
実験では、コレステロールを多く含むエサを日常的に与えたウサギに、室戸沖の1%希釈海洋深層水、蒸留水、表層の海水(表層水)、有機物を除いた海洋深層水、特殊なフィルターで海洋深層水の有機物を分離したものをそれぞれ4週間与えた。その結果、1%希釈海洋深層水と海洋深層水の有機物を与えたウサギのみ動脈硬化が抑制されていることを確認した。
分離した有機物の化学構造を調べたところ、
笹栗教授は「薬剤の効果に比べると効果は弱いが、海洋深層水は自然界に無尽蔵にある。また日常的に飲むことにより動脈硬化や心臓疾患、脳梗塞などの予防、術後管理に応用できる可能性がある」としている。
また、ヒト(男4名、女6名)に対して、室戸海洋深層水のミネラルウオーターを毎日200mlずつ、2週間飲用し、飲用前後の血小板凝集能を測定したところ、血小板凝集能が明らかに抑制されていることを確認している。
蒸留水を与えたウサギの血管断面。動脈硬化が進行している。
1%希釈海洋深層水を与えたウサギの血管断面。動脈硬化が有意に抑制されている。
参考文献
●「海洋深層水に由来する機能性素材及びその用途」発明者:笹栗志朗(特開2007-291080) (Geethalakshmi R, et al., Intake of dissolved organic matter from deep seawater inhibits atherosclerosis progression,
Biochemical and Biophysical Research Communications, 387 (2009) p25-30.)
佐渡海洋深層水の効果と活用について
高知大学名誉教授
医療法人財団 健貢会 東京病院 笹栗 志朗院長
大庄が佐渡海洋深層水から抽出した有機物を高知大学医学部で調べたところ、室戸海洋深層水と同様の作用部位を持つ有機物が含まれることを確認した。資源が乏しいわが国においては、海洋深層水は貴重な資源。佐渡海洋深層水における研究を行う中で、新たな活用が行われることを期待したい。なお、海洋深層水中には、数多くの有機物が含まれており、その大部分は未解明である。今後、有機物の研究が進み、海洋深層水の一層の健康効果が明らかになっていくことを願っている。